《MUMEI》
安堵。
「呼んだかい?神名薫君♪」





この声は
やっぱり
君だったのか
小鳥遊晶……………!!
感情に抗わず、『俺』は小鳥遊晶の胸ぐらを掴む。
睨むだけで言葉は出ず、かといって暴力を振るうこともできない。
体は、震えていた。
「怖かったろうに。寂しかったろうに。誰にも解ってもらえない世界ほど、恐ろしいものはないよね」
全てを見透かしたように微笑み、そっと頭を撫でてくる。
「ワタシにもその気持ちは解るよ。世界に取り残されている、そんな感覚を」
「いつまで…………いつまで僕達を…………弄ぶつもりなの…………いつになったら、こんなことが終わるのさ……」
「目的は言ったはずだよ。終わりは二つに一つ。君達が壊れるか、ワタシが飽きるか、だよ」
「ふざけないでよ…………こんなの……………」
不意に全身の力が抜け、膝から崩れ落ちる。
小鳥遊晶が何かをしたわけではなかった。
この世界で、僕だけが異質な存在だと悟った時、僕は絶望した。
誰とも会話することができない。
誰にも触れることができない。
誰にも僕を認識できない。
もう僕は、みんなに会うことができない。
この絶望は、他の何とも言い現せない。
だから、僕は懇願した。
誰でもいいから、助けてくれ、と。
その直後、小鳥遊晶が現れた。
認めたくなんてない。
だってそれは、みんなとの裏切りとも言える。
僕は、ほっとしてしまったんだ。
誰であろうと、僕を認識してくれた人がいた、と。
力が入らないのは、その反動。
緊張の糸が切れて、腰を抜かす。それと同じだろう。
「泣いていいんだよ。ツラいことがあった時は、泣いたっていい」
「こんなことになったのは、君の仕業でしょ…………。身勝手すぎるよ」
「まぁ否定はしないよ。でも、部分的に否定はするよ」
「…………どういう意味さ」
「今から説明するよ。でも、その前に」
微笑みは跡形もなく消え去り、射抜くような視線を僕に向けた。


「君に元の世界に還すチャンスをあげよう」

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