《MUMEI》
いざ、最後の戦い
 その直後に銃声が響き、同時に破壊音。
続いて、再び悲鳴が聞こえてきた。

「……なんか、下、大騒ぎなんだけど。何したんだ?」
ユウゴが聞くと、ユキナは楽しそうに「殺傷能力抜群のトラップ」と答えた。
そういえば、持って行ったはずの段ボールがない。
「あれ、全部使ったのか?」
「うん。あ、一応、わたしたち用にガスボンベとか包丁とかは残してるよ」
そう言って、彼女は机の上をポンっと叩いた。
たしかに、そこには直接攻撃に使えそうな物が置かれている。
「あとは全部使っちゃった。むしろ、足りなかったぐらい」
「いったい、なに仕掛けたんだよ。この短時間に」
ユウゴは呆れるような、感心するような表情でユキナに言った。
「わたし、昔からそういうの好きでさ。よく小説とか映画とか見てたから」
「……そういうのって、どういうのだよ」
「だから、」
続けて説明しようとするユキナの声を、さっきよりも近くなった悲鳴が掻き消した。

「まあ、いいや。そろそろ動こう。いずれはここにも奴らが来る」
「そうだね。もっとも、かなり人数は減ってると思うけどね」
ユキナは得意げな表情で笑う。
ユウゴは窓から下を見ながら「それは、どうかな」と小さく言った。
「え、なに?」
ユキナも同じように下を見る。
「援軍到着、だな」
「……うわ、サイテー」
 ユキナの声を聞きながら、ユウゴは気合いを入れるように「よし!」と声をあげ、机の上の物を手に取った。

「じゃあ、行くか。あと少しだ」
二人は同時に頷き、音楽室から廊下へ出た。

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