《MUMEI》 違い。響介の教室に入った。 まだ授業中で、入るのに躊躇ったが、本当に僕の事が見えていないようで、僕の侵入に気付く者は誰一人いなかった。 窓際の一番後ろに、響介の机はあった。 だが、机に中身は入ってなく、『風影響介』という名札が貼ってあるだけの物となっていた。 響介の私物は、この教室には何も無かった。 『風影響介はあの日、最初の襲撃には助かったんだが、激昂し、無謀にも品川廉達に立ち向かい、敗北した。今は植物状態でね。目を覚ますことは奇跡が起こらない限りあり得ないそうだよ』 不意に小鳥遊晶の声が聞こえた。 その事実だけを淡々と話した。 両手の握り拳が強まっていく。 ―――――――――――――― 美鶴の教室。 そこに『天草美鶴』の机はあった。 響介と違い、私物がいくつかあり、偶然今日は日直のようだった。 だが、肝心の美鶴は、その机に座ってなどいなかった。 『天草美鶴は一応無事さ。だけどあの日、詳細は伏せておくけど、天草美鶴は身も心もズタズタに傷つけられてしまったんだ。それから天草美鶴はただ一度たりとも部屋から一歩もでていない』 ――――――――――――― ミクちゃんの教室。 「え………」 ミクちゃんの机は、無かった。 「そんな………なんで」 『逆間久美は唯一無傷で助かった。だけどさ、心優しい彼女が自分が誘拐されたせいで他人が傷つくのに心を痛めないわけがないだろう?あの日から間もなく、逆間久美は転校したよ』 ――――――――――― 僕の、教室。 僕の机は、予想に反して、あった。 だけど 「は、はは………」 渇ききった笑い。 僕の机の上には、花を添えられた花瓶に遺影が置かれていた。 一瞬、誰か虐められているのかと思った。 みんな、大真面目に花を添えたんだろうな………。 「ダメだこんなの!!」 新斗の望んだ世界。それを壊すのに、正直躊躇していた。 辛くて、悩んだ末に作り出してしまった世界を壊したら、新斗は一体どうなってしまうだろうと考えていた。 だけどそれは、間違いだ。 誰も幸せになんてなっていない。 こんなバッドエンド、僕らは望んじゃいない。 「ごめん、新斗」 この世界を、ぶち壊す。 前へ |次へ |
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