《MUMEI》
見習い召喚士と正反対のふたり
村を一歩出れば魔物だらけの世界で人々は対抗する手段に別世界の者たちを喚び出す方法を得た。しかし、その技術はほんの一握りの人間にしか使うことが出来ず、その素質が少しでもあると思われた子供たちは近くの町にある養成所に預けられるのである。


その養成所に5歳の頃から預けられ今年で10年になる少年、ルシアは未だに芽が出ずにいる。隣村に住む同い年の少女カノンは低級の召喚であればできるようになっていた。


召喚士は14、5歳には召喚ができるようになり、20歳にもなれば村の守備隊として働くのが大半で15歳にもなり未だに召喚ができないのは珍しいものである。




「これより1ヵ月間、長期休暇とする。各自気をつけて帰るように。」

教官が休暇を告げる。建物の改修があるらしく生徒は皆、各々の故郷に戻り再び養成所に戻るのは約1ヵ月後である。

「ルシアくん、一緒にいこっか。」

ルシアは召喚することができないため、カノンの申し出を二つ返事で了承した。

「ホントごめんね、わざわざ遠回りになるのに…。」

ルシアやカノンの村は比較的近くにあり、歩いて数時間の距離にあるため徒歩で帰ることになった。他の生徒は飛行船で帰ったり、町の宿泊施設で休暇を過ごす者もいた。

「いいの、いいの!ルシアくんの村で買っていきたい物があるし!」

カノンは桃色の髪をおさげに結んだ明るい少女で養成所でも中心的存在だった。
一方、ルシアは黒い髪の少年で召喚できないことを引け目にとって養成所でもあまり積極的に話そうとはしなかったが、仲の良いカノンを含め数人とはよく話をしている。

「さぁ、急がないと夜になっちゃうし早くいこー!」



村に向けて歩き出して1時間とちょっと。中間地点付近にある川に着いた。付近の村を
行き来する人もそれなりに居て、魔物なども少なかった。

「ちょっと疲れたから水汲んでくるねー。さっき空っぽになっちゃった」

あはは、と笑いながら空の水筒をさかさにして水がないことをアピールする。

「それなら俺が行くよ。休んでて」

水筒を受け取ると、カノンはごめんね、と申しわけなさそうにする。大丈夫、と返事をして河原に降りていくのであった。







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