《MUMEI》

ルシアの村の入口にふわりと舞い降りると2人を解放する。木で組まれた門をくぐるとすぐに村の守備隊の屯所があり、顔見知りの守備隊の1人が駆け寄ってくる。

「ルゥシアー!!」

陽気で人気者の彼はルシアが養成所に行くと知ると誰よりも喜んでくれた1人である。が、後ろに控えている翼の騎士を見るなりぎょっとした。

「ルシア…いつの間にこんな奴連れ出してんだよ…。【光戦騎】セルエル…称号持ちだろ?」

称号は最上級の特権で召喚士のうちでは称号持ちと呼ばれることが多い。滅多にお目にかかれない為、本職でも無い限り名前すら知らないことが多いものだ。

「そんな名前だったんだね…」

ルシアは初めて聞く彼の名を心の中で復唱する。自分の出したやつくらい名前知っとけよ…と呆れ顔の隊員が村の中へと案内する。
セルエル本人は見慣れない村をキョロキョロと見回しながらついて来る。

「わたしは遅くなるといけないから先にいくね!ルシアくんまたね。」

買い物を済ませたカノンは自らの家へと急ぐ。ルシアの家の前に着くと本人より先に隊員が帰ったぜーと大声をあげる。中からは母親と2つしたの妹が顔を出した。

「おかえり、兄ちゃん。それが召喚獣?」

妹のリーンはセルエルの顔をまじまじと見ている。リーンは召喚のことには疎く、よく分かってはいないのだろう。母親は珍しいものであることは分かったようだがそれでも最上級であるとは思ってすらないようだ。

「えーっとセルエルっていう…らしい。さっき初めて会ったばかりなんだ。」

ルシアの説明を隊員が補足するとやっとすごさが分かったようで2人共唖然としてセルエルを見る。ルシアとの久しぶりの再会とセルエルの歓迎会を兼ねた村全体のドンチャン騒ぎは夜遅くまで続いた。









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