《MUMEI》

僕は叫び声をあげながらその場で踵を返した。

(逃げないと……ッ!)

走るのは正直、得意ではない。充分な体力も、速さも僕は持ち合わせていない。

でも、兎に角逃げることしか出来なかった。
逆に逃げなければ、確実に近界民に捕らえられるだろう。


だが−−−


「……っ!」

走り出そうと、一歩踏み出した瞬間、何かに躓き、そのままその場に尻餅をついた。

なんとか顔を上げ、近界民の方をみる。近界民は、いつの間にか僕との距離を30メートル程に縮めていた。

すぐに姿勢を立て直そうとするが、体に上手く力が入らない。

『クワァァァァァァァァ!!』


目の前の近界民が大きく吠える。それは「もう観念しろ」とでも言っているようもであった。

(もう、駄目だ……っ!)

僕は思わず目を瞑る。



−−−その刹那。

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