《MUMEI》

「セルエルはどんなとこの人なの?」

休暇中のある日、戦闘訓練のためにセルエルを呼び出していたルシアはふと疑問を口にした。召喚獣もそれぞれの祖国がありそれぞれ違った生活をしているものだ。

「…私は天界の聖剣騎士団の団長をしております。双子の弟が居たそうですが物心ついたときにはもう1人でした。喚び出されたのは初めてでそれなりには興奮しているのですよ。」

落ち着いた雰囲気の彼はすらすらと経歴を述べる。ルシアには彼の口から出た“聖剣騎士団”なるものがどの様な組織かは分からなかったのだが漠然とすごいものであるという認識はした。

「主君も私が初めての召喚獣だと聞きました。ですがそれだけの力があれば他の召喚もできるのではありませんか?」

確かにルシアはセルエル以降新規の召喚を試してはいない。最上級の召喚が行えるのであれば他の召喚は容易いはずである。

「…そっか、試したことなかったや。初めてできてそれで頭いっぱいだったから。うん、やってみるね。」

セルエルが見守る中、再び呪文を唱え召喚を開始する。すると巨大な黒い門が姿を現した。深い紫色の光が吹き出して門が開く。

「誰だよ、俺を喚び出したヤローは…」

気怠そうな真っ赤な目、悪魔の様な黒を基調とした格好、黒い髪には真っ赤に染まった部分もあるが何より気になったのは…

「片翼…?」

烏の様な黒い翼が右だけないのである。

「うるせーよ、ケチつけんのか。俺は【黒片翼】アルギエル。アンタちゃんとやれんだろうな。」

主人を見定めるようにルシアを睨みつつ自らの名を名乗る。言うまでもなく最上級の彼はルシアの隣に居るセルエルを見ると不満そうにするのであった。







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