《MUMEI》 殺戮のジョーカー「ま、待ってくれ!娘がいるんだ!もうすぐ小学生に上がるんだ!だから、だから……っ」 必死に私にすがり付く目の前の男。 こいつはマフィア・レッドテイルの頭の右腕。一般市民をも殺しておきながら裁きを受けていない者。 今日はこいつを含めたレッドテイルの幹部を狩る。 「……だから?」 私にすがり付き、見逃してくれと目で訴える男を冷たい目で見る。その瞳には恐怖が浮かび、身体も寒くもないのにガチガチと震えている。 「娘が……娘が二十歳になるまでは生きるって、妻と約束したんだ!だからお願いだ!今回は……っ」 すでに額に触れている銃口。引き金を引けば、瞬く間に目の前の男は命を落とす。 分かっている。目の前の男も、すでに息絶えた彼の部下も、身勝手な頭に振り回されてただけで、自分の意思で一般市民を傷付けた訳じゃないって。 でも、私が今彼を捉えてる銃は、そんなのお構い無しに命を奪えと命令する。 善人を殺した罪を裁けと叫ぶ。 いくら泣いても叫んでも、この銃からは逃れられない。 罪人も、私も。 「お願いだ……ジョーカー」 彼が私の異名を口にした瞬間、引き金を引いた。 辺りは血の海。私以外に生きてる人はいない。 銃をしまい、レッドテイルの頭のいる部屋へと向かう。 これが私の仕事。残酷無慈悲に悪の象徴を狩りとる死神、とでも言うべきか? もう何年も他人の命を散らしてきたから、人の命を奪う罪悪感が薄れるんじゃないかって怯えてるのも事実。幸いそんなことはないけど、この呪われた銃のせいで私がこれからどう壊れていくのか……見ものだな。 レッドテイルの頭の部屋の真ん前に立つ。 ここに、一般人大量虐殺の首謀者がいる。 呪われた銃が、狂った悪魔を堕とせと命じる。 そっと扉を押すと、ぎぃぃ……と、古くなった扉が開く音がした。 前へ |次へ |
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