《MUMEI》
痴漢
───サワッ。



ガタゴトと揺れる朝の満員電車の中、お尻に伝わったその感触が私の肩をビクリと跳ねあがらせた。



───痴漢?



いや、ぶつかっただけかも。

けれど、その後もう一度お尻に何かが触れた。



ビクリと反応してしまい、顔を俯けて、下ろした黒の胸までの髪の毛で周りから顔を隠す。



高校に通って早一年。




一度もされたことなかったけど、これ──確実に、痴漢だよね…?




もう一度、今度は強く揉まれたお尻に、顔がカッと熱くなる。


そしてドクリと心臓が音を立てた。




でもそれは恐怖────よりも、期待。




お尻を触っていたその手は、私が拒まないのを感じてか、私の太ももを触りはじめた。



「…はぁ、はぁ」



そして後ろから聞こえた小さな息遣いに、私の下半身がジワリと熱くなる。





……自分が周りの子よりも淫乱だと自覚はしていたけれど。


痴漢されてみたいとどこかで思っていたのも承知の上だけれど。



いざされたら恐怖の方が勝つと思っていたのに。

まさかこんなにドキドキしてしまうなんて。


……私、こんなに淫乱だったんだ。




自分の淫乱さに嫌気がさしながらも、私の意識はもうほとんど周りの目線と、後ろの手に集中していた。




太ももに触れてるゴツゴツした硬い手は、確実におじさんって感じで。



…どうしよう、興奮する。



太ももを揉まれて。

下から上に触られて。



上の大切なところに近づくたび、私の足はビクリと揺れた。



ほんの少しずつ、でも確実に息が上がる。




──横の人とかに、気づかれてないよね?


──この車両に同じ学校の人乗ってたら、どうしよう。




なんて考えて、余計に私の顔は熱くなった。





太ももを長く触られて、私もじれったく感じてきた頃。



電車が止まった。


そして電車を降りる人に紛れて、後ろにいる痴漢が私の背中をグイッと押した。



「わっ」



え?な、何?


突然のことに、ほんの少し焦りつつも私は押された衝撃で扉に近づく。



降りる人の邪魔にならないようにハジによって、そしてもう一度電車が動き出した時。


気づけば、私は電車の扉の前に来て、前は扉、後ろは痴漢という状態になってしまっていた。



……これ、結構、やばいよね?



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