《MUMEI》

光と共にセルエルが現れた。
普段の温厚な笑みとはかけ離れた不機嫌そうな顔をしている。

「思い出しましたよ。全て…貴方のことも、です。」

アルギエルは状況を把握できてないようで唖然としている。

「今日…主君のあの行動を見て、思い出したんですよ。私が倒れたとき…必死になって助けようとしてくれた…唯一無二の弟のことを。」

ルシアは自分たちの利益より他の人を助けることを優先した。それがその時のアルギエルの姿と重なったという。

「申し訳ありませんでした。忘れてはならない、貴方のことを……」
「うるせぇよ!」

セルエルの言葉に重なるようにアルギエルが勢いよく立ち上がり叫ぶ。

「今更…!今更遅いんだよ、思い出したって…何も、何も変わらねぇじゃねぇか…」

アルギエルの言うとおり、過去はもう、変わらない。セルエルはアルギエルを抱きしめ、まるで宥めるかのように頭を撫でる。

「過去は変えられません。ですが、未来なら…いくらでも変えれます。」

アルギエルの両目からボロボロと涙の粒が零れる。セルエルの目にも涙が溜まっていた。




少し落ち着いてからセルエルがルシアに向き直る。アルギエルも兄に従ってルシアの方を向いた。

「主君、これからも…我々“兄弟”をよろしくお願いします。」
「今まで悪かった。これからも…えと、よろしく。」


「もちろん、こちらこそよろしく!」



2人が元の世界に戻るとルシアも部屋へと戻った。明日は合宿最後の日。ルシアは早々にベッドに潜った。






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