《MUMEI》

宿泊施設から送迎用の飛行船まではあっと言う間でモンスターとの遭遇も殆どなかった。飛行船が出発し、空を駆け養成所がある町へ向け加速し始めた。

空にもモンスターは多数いる。鳥のようなものからドラゴンといった大型の種。他には精霊や妖精といった類のものまでそれぞれだ。それの対策のために教官たちは飛行船の周りの監視を続けている。




船内の広間に生徒たちが集められた。

「今後についてですが」

合宿に同伴していた教官たちの中の1人である女性教官が正面に立つ。

「戦闘訓れっ…」

爆音が響き、教官の言葉がかき消される。そして他の教官が駆け込んできて、飛行船がドラゴンに包囲されたことを告げてまた出て行った。


それを追ってルシア、ラフェルを含めた数人が外に出ると上級のドラゴンの群れが飛行船を包囲していた。

「セルエル!アルギエル!」

門が開くと同時に2人は空へと飛び出すが敵の火力と弾幕で押されつつあった。教官たちの召喚獣も応戦しているが近寄せないことが精一杯だ。

「主君!不本意ではありますが…1人、喚び出して貰えますか?」

セルエルが飛行船近くまで来てからそう言った。何か策があるのだろう。

「彼の名は…」


セルエルは再び大空に舞う。アルギエルとのコンビネーションはやはりずっと会わずとも兄弟なのだと感じさせた。






「ボクは『博打王』アインスタート。どうぞよろしくぅ」

ルシアが新たな門を開く。ピンクの髪をしたマジシャンのような少年が現れた。彼がセルエルの言っていた人物である。…のだが飄々とした態度にルシアやその周りにいる人々にも不安がよぎる。

「不安なんだろー?こんな奴がって思ってんだよねー?あはは、ボクもそう思うー♪」

ニコニコ笑いながら話す彼にこの状況に対する危機感は全くないのだろうか。

「主さん大丈夫?休んでていいよ!疲れてるっぽいし…」

アインスタートには全て見えているのだろうか。みんなの思考も、ルシアの最上級3人連続召喚による疲労も、瞬時に全て見抜いた。

「あぁ、あいつらが煩いから休めないのか…」

ぼそっと呟いたそれは周囲の人々には聞こえることはなかった。



「ほーら、大逆転だ!」

片手に5つずつ合計10個のサイコロを投げる。空高く上がり、床に転がった。出た目は全て1。


「あは、これで終わりだよ!…爆ぜろ」

飛行船を囲むように爆発が連鎖的に起こる。ドラゴン達は逃げるように散り散りに逃げ出した。


セルエルとアルギエルが降りてきてルシアの体調を気にしている。教官たちもルシアを労い、早く休むように促す。 

皆が安堵する中、1人焦る者もいた。






「逃げたらボクが全弾外したのバレちゃうじゃないかー!もー!」

運がいいのか悪いのか分からないアインスタートであった。






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