《MUMEI》

出来損ないだと何度も蔑まれた。周りの目が怖かった。


兄や姉はずっと優秀で、自分だけが何も出来なかった。勉強も何もかも。挙げ句の果てに言われた言葉が『できそこないの末弟〈ラフェル〉』。

「はは、やはり昔と変わってないと言うことか…我ながら情けないな。」

ベッドから見る天井が、まるで先を行く兄たちのようで悲しくなる。

兄たちはいつも庇ってくれた。それが尚更、恨めしく思えた。勝者の驕りに感じてしまう。あの時の自分は歪んでいたんだろう。



兄弟の中で唯一、適正審査に合格した時は嬉しかった。初めて兄たちに勝ったと思った。笑顔で送り出してくれた兄たちとは引き換えに、他の家の人たちは邪魔者を見る目だったことをよく覚えている。


「これでは何も変わらない…」





そんなわけにはいかない。
呪文を唱えると空中に光を纏う門が現れる。



「わたしは『爆炎姫』ファルティーテ。炎の化身さ。」

褐色の肌に赤く燃えるような長い髪。金色に輝く槍を持つ勝ち気な女性だ。

「変わりたいっつーアンタの想い、しかと受け取ったよ!」

これからよろしく、と満面の笑みを浮かべるファルティーテには自信がみなぎっているようだった。







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