《MUMEI》

寮に戻ったルシアはまたアインスタートを喚んでいた。アインスタートはもの珍しそうにルシアの部屋を漁っていた。最低限の物しかない部屋のどこが楽しいのか、ルシアは不思議だった。

「面白い物なんてないけど…」

「いいや、面白いよ!この世界すべてね!」

満面の笑みでルシアの部屋を調べている。アインスタートにとっては面白いのだろう。

「ボクね、最弱って言ったでしょ?それはね、劣勢の時にだけ本気が出せるからなんだよ。」

飛行船の時は数による“劣勢”だった。ドラゴンの群れに襲われ多勢に無勢。

「それでボコボコにされた時とか、囲まれた時とか。そうじゃないと100%の力が出せないんだよね〜」

ルシアのベッドにダイブして「ふかふか〜」と笑みを浮かべ、ゴロゴロしている。

「だから今日は全然だったんだね。」

「そゆこと♪だからボクを出すときは注意してね!しばらく突っ立ってボコボコにされないと倒せないかもしれないから!」

あはは〜と笑いながら、笑い事ではない話をする。やはりアインスタートは変わった人物なのだろう。

「誰かが傷つくとこなんて見たくないよ…。」

「面白いこと言うね〜召喚獣は向こうの世界に戻ればあっと言う間に治っちゃうのに」

アインスタートの言うとおり、召喚獣は一度戻れば外の世界で負った怪我は治る。致死打だとしても。

「それでも痛みはある。心も。召喚獣は機械じゃないから。」

ルシアが真っ直ぐアインスタートを見てそう答えた。迷いのない、本心だ。

「やっぱりキミ、変わり者だね……。はは、けど気に入ったよ。ここまで言ってくれる人、初めてだ。」

アインスタートはいつも盾にされていた。それが正しい戦い方だから仕方ないと、そう自分に言い聞かせていたらしい。

「うん、よし。ボク頑張って強くなるよ!セルエルにもアルギエルにも負けないくらい強く!」





「最弱なんて言わせない!」
アインスタートはそう誓った。



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