《MUMEI》
出会い
俺、吉崎歩夢(よしざきあゆむ)。高校3年。顔も勉強も運動もまあまあ。1年のとき友達と組んだバンド「T&R」ではギターを担当している。が、その腕前もまあまあ。
そんな少し残念な俺には一生手の届かない愛しい人がいる。
うちのバンドのボーカル 望月優太(もちづきゆうた)。ベース担当の響の幼馴染みだ。
[容姿端麗]
その言葉が優太を表すのに一番相応しい言葉。女子にも男子にもモテるような性格。顔立ち。おまけに耳元で囁くような甘い歌声。好きにならない方がおかしい。
出会った時のことは鮮明に覚えている。
「こいつ俺の幼馴染み!学年は1個下だけど、絶対良いボーカルになるから!」
バンドを組んだものの、肝心なボーカルが見つからない矢先のこと。放課後響が急に俺の家に優太を連れてきて言った。
ありきたりだけど、出会った瞬間恋に落ちた。
見るからにまだ子供なのに凛とした立ち姿。
「よろしくお願いします」 きれいな声と笑顔。
トクン。胸の奥でなにか始まる音がした。
これが優太と俺の出会いだった。

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