《MUMEI》

翌朝。

ルシアたちは飛行船で飛び立った。王都に着いたら船着き場で王都の召喚士と合流することになっていた。

飛行船ではルシアの召喚獣3人共出てきて警備をしている。ドラゴンに包囲されるという苦い記憶からだろうか。しかし、まともに警戒態勢をとっているのはセルエルだけだ。アルギエルは気怠そうに遠くを飛ぶ鳥を眺めているだけ。アインスタートに至っては船の設備に興味を持ったようだ。




飛行船では何事もなく、無事に王都に着いた。船着き場に降り立つと、警備隊の制服を着た女性が立っていた。女性はルシアたちに気づくとこちらに歩み寄ってくる。

「王都警備隊、ノアール・フォン・ステラと申します。長いのでノアとでもお呼びください。長い旅路ご苦労様でした。」

20代後半くらいだろうか。クリーム色の長い髪を後ろで1つに結び、赤を基調とした軍服を着用している。

「養成所から来ました、ルシアです。」
「同じくカノンです。」
「ラフェルです。」



ノアール…ノアは王城付近にある警備隊の屋敷へと案内した。洋風の造りの立派な屋敷だ。

「では設備等を案内します。寝室は個室を用意してありますので、後程案内しますね。」

ノアは食堂や会議室といった共有スペースから順に案内していく。寝室は隣同士3部屋並んでいた。



召喚訓練用の別棟に向かう途中、ノアはふとルシアに向き直る。

「ルシアさんの父上は確かこちらに勤務されているのでしたね。」

「は、はい。」

「あの方は訓練棟によく籠もってらっしゃいますから、会えると思いますよ。」




ノアの言葉通り、ルシアには懐かしい後ろ姿があった。前回会ったのは5年程前、たまたま近くに遠征してきた父親が寄り道してくれた時だっただろうか。

「んあ?おう、ルシアじゃねえか!」

褐色の肌の豪快な男性。ルシアの父、トーラス。久しぶりの再会が嬉しいのか自分の召喚獣をほったらかしにして駆け寄ってくる。

「案内する場所はこれで最後です。ここで訓練するのは自由ですのでどうぞ。夕食の鐘が鳴りましたら食堂までお越しください。それでは。」

ノアは訓練棟をあとにする。ラフェルとカノンはルシアの邪魔にならぬよう端の方で訓練を始めた。





「ルシアも最上級を手に入れたんだろ?見せてみろよ。」

トーラスはほったらかしにしていた自分の召喚獣を紹介する。最上級の【闇童子】ククリ。黒いローブを羽織った小さな少年だが身の丈に合わない巨大な鎌を持っている。

「ククリも会いたい!他の奴と会ったこと無いから!」 

トーラスの召喚獣は最上級はククリだけであとは上級がバラバラといるのだという。ククリは無邪気な笑みでこちらを見上げる。本来最上級は1人召喚できるだけで主力を担えるのだ。こちらの世界では会わなくても珍しくのだ。

「わかった。」

誰でもいいからと門を開こうとする。



セルエル、アルギエル、アインスタートがもつれるようにして出てきた。






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