《MUMEI》
見習い召喚士と卒業試験
王都は瞬く間に復興した。王都警備隊のをはじめとする人々の尽力で、元通りの生活に戻り始めた。王都付近の町も被害を受けていたが、順調に進みつつある。



養成所では新たに卒業し、各町の警備隊やフェッセン征空団のような傭兵集団に配属させるための卒業試験がある。そして今、教官室では今回受ける生徒の選考が行われていた。

「年長者及び実績のある者…。最上級召喚士の3人は固いですね。」

最上級召喚士はどの隊も喉から手が出る程に欲しがっている。養成所時代からその様な事ができるのは、ごく稀なことだからだ。

「フェッセン征空団から3人のうち1人でも試験を受けるのであれば観覧したいと連絡がありましたが…」

自らの隊に引き込むために先にアプローチすることはよくあることだ。

「3人を受けさせましょう。実績は充分、年齢も問題ないでしょう。」
「そうですね、フェッセン征空団のアプローチも来ていることですし。」
「そうとなればフェッセン征空団に返事しないと。」

会議の結果、今回の受験者はルシア、カノン、ラフェルの3人となった。すぐさま通知書が寮の部屋に届けられる。




「卒業試験受験者通知書…。」

ルシアは部屋で1人呟く。この先どこの隊に進むのか見えない未来に不安が多い。


「やっと、認められるのだ…。」

ラフェルにとっては悲願だった。卒業試験に合格してこそ求めていた一人前の証拠だ。


「わたしが、か…。実感ないなぁ」

カノンは実感が湧かないようだ。ただ、みんなに追いつきたいその一心だったのだから。



三者三様の想いを胸に、卒業試験が始まる。

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