《MUMEI》

第二部は教官と1対1、召喚獣も1体だけで戦う。大規模対戦に対する訓練として3対3の戦いも行われるが、あくまでメインは1対1の戦闘である。

「では、ルシア前へ。」

ドーム型の会場に教官の声が響く。受験者席からルシアが立ち上がり、教官の前に立つ。受験者には教官がどのような召喚獣を使うかは知らされていない。上級召喚獣である、ということだけが教えられているのだ。

「両者同時に召喚獣を召喚してください。」

受験者には一切制限はない。最上級を使おうが、下級で戦おうが勝手だ。勝てばいい、内容は問われない。

「チェインロックドラゴン」

教官が召喚したのは鎖で縛られたドラゴン。一定の攻撃を受けると鎖が解け、真の力を出す。真の力を解放したチェインロックドラゴンは、最上級にも引けを取らない火力を持つという。

「アインスタート」

陽気な笑顔でアインスタートが出てくる。しかし、その顔はすぐに曇った。一騎打ちは得意ではない、1対複数を得意とするアインスタートは不利だ。

「ルシアー…なにここ」

普段の彼からは珍しい、弱々しい声が出てくる。1対1での戦闘を理解したのだろう。そして相手もまた、攻撃を受けてこそ真価を発揮する、言わばカウンター型だ。

「では、はじめ」

ドラゴンは大きな音を発しながら、鎖がない口から炎を吐く。最低限の攻撃はできるが、足や翼は鎖で繋がれており、死角に入ることは容易だ。

「あっぶないなーっ」

難なく避け、ドラゴンの背後にまわる。鎖のせいで動けないドラゴンは、アインスタートを攻撃することはできない。

「さぁーて、やりますか」

アインスタートもチェインロックドラゴンの性質は充分に理解している。一撃で終わらせなければこちらの身も危ない。



アインスタートは地面から体の各所に繋がった鎖を巧みに使い、ドラゴンの頭によじ登る。身軽なアインスタートだからこその技だ。下手に登れば、ドラゴンの身じろぎで振り落とされかねない。

「ゼロ距離だぁっ!!!」

ドラゴンの口内に爆発を叩き込む。口内で起きた爆発は、上級ドラゴンを倒すだけの破壊力を持っていた。

「チェインロックドラゴン戦闘不能、【博打王】アインスタートの勝利!ルシアの勝ちです!!」



「ルシア、ルシア!ボクやったよー!」

満面の笑みでアインスタートが駆け寄ってくる。一騎打ちで勝てたことが余程嬉しかったのだろうか、普段よりテンションが高い。

「うん、ずっと特訓してたんだもんね。ありがとう。」

アインスタートを帰して席に戻るとカノンとラフェルに迎えられる。2番手のカノンは「ルシアくんに続かないとだね!」と息巻いており、ラフェルも「最後というのも緊張するな…」と少し緊張した様子だ。




「カノン前へ。」

カノンが立ち上がり、教官の前に立つ。カノンが召還するのは勿論、レアンだ。

「デスサイズ」

教官の召喚したのは大鎌の女戦士。間合いは短いものの、機動力でカバーするアタッカーだ。



カノンの試験が始まる。

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