《MUMEI》

市場で買い出しをしているという団員はすぐに見つかった。女性2人組で、クレッセルを見つけると近寄ってきた。

「新入りくんや。最上級使えるんやで。」

最上級という言葉に2人は目を丸くする。

「リリーナ。リリーって呼んでね」

「ミュリアです。よろしく。」

2人は姉妹で、2人共おなじ黄色の髪をしていた。姉のリリーの方は縦ロールで、ミュリアは一本の三つ編みにしている。

2人は食材の調達途中らしい。軽く挨拶すると他の店に行ってしまった。

残る2人のうち1人は特定できないもののすぐに見つかるという。クレッセルはずっと上を見ながら歩いていた。ルシアが不思議に思っていると、「見つけた」と声をあげた。

「ユーリ下りてこーい」

高い塔の展望台に白髪の青年がいた。その青年はクレッセルを見つけると塔を降りてきた。

「団長の言っていた新入りくんだね?ユーリ・ローステイト・クリアンネイトです。クレッセルの弟。」

物腰柔らかな好青年だった。クレッセルの弟らしいが似ているのは、眼鏡をかけているところぐらいだ。

「クロウならさっき見かけたよ。こっち、ついてきて」

クロウと言うのは最後の1人のことだろう。ユーリは細い路地を迷うことなく進んでいく。路地と路地が交差するところに小さな箱を積み、そこに座って竪琴を奏でる黒髪の男性がいた。付近に住む子供たちが聞き入っている。

演奏が一段落して子供たちが帰るとクロウがやっと顔をあげた。

「団長、どうされましたか?」

前髪が長く、目が見えないが温厚な雰囲気が醸し出されている。

「新入りくる…ってクロウにだけは伝え損ねてたんやった。」

「すみません、琴の修理で籠もっていましたもので…。クロウ・ロゼットです。よろしくお願いします。」

彼は琴のことになると、まわりが見えなくなる癖があるという。悪気があるわけではないのだが、このような連絡事項が伝わらないことがあるようだ。



フェッセン征空団は変わった人物だらけのようだ。ルシアは彼らと共に、召還士としての道を歩んでいくことになる。

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