《MUMEI》
土曜日のハプニング
今日は土曜日。本来なら学校はお休み。だけど私は今学校にいる。


文化祭の準備のため泊まり込みで作業することとなったのだ。


だが泊まり込みは私だけ。今日来てくれたやつは殆ど泊まり込みの許可が降りなかったり用事があったりして無理らしい。


「ごめんね橘。親戚の結婚式があるから午前中しか作業できなくて。しかもこんな出来で……本物ごめん」


彩原も桐生と同じく裁縫班。しかも意外なことに家庭科の成績が常に1だという。なんとなくこいつはサラッとなんでも平均以上こなすかと思ってた。


「いいよ。無理するな。作業スピードが亀より遅いことはもう何も言わないから手を動かせ」


裁縫班全員こんな有り様。4日かけてようやく一着完成なんて絶望的に遅い。なので午前中は大道具を粗方終わらせて、そのあとは全員裁縫班と合流する予定だ。


「S女学院の歩美ちゃん可愛いよなぁ」


「いやいや、R学園の深雪ちゃんの方が美人だろ!」


「何?お前清楚系が好きなの?ありえねー!」


「お前こそあんな気の強い女のどこが良いんだよ」


「ツンデレなんだよ!そこがグッとくるんじゃねぇか!」


「清楚が一番だろ!」


「ツンデレだってやっぱ!」


「そこ!無駄口叩いてないで手を動かせ手を!」


作業をめんどくさがってのたのたとしか進まない二人が会話だけして手を動かしてなかったので注意した。


嫌々そうにこちらを見上げる二人だが渋々作業を再開した。


男子ってなんでこう無駄口ばっかり叩くんだろう。お喋り好きだけどやることはきちんとやる女子より質が悪い。


会話の内容が今話さなくても良いだろって内容が多々だから余計にイラつく。


桐生がいてくれたらクラスのムードメーカーになってくれただろうに……なんだって家の事情でいないんだよ、あのアホ。


いやいや、駄目だ。桐生には桐生の事情があるんだ。無理強いしちゃいかん。私は私のできることを精一杯やるだけだ。


時計を見ればもうすぐ11時。早いやつはもうお腹が空くころかな。お昼も作業してくれるやつ多いし、差し入れでも作ってくるか。


「彩原。ちょっと家帰るけど、戻るまで居れる?」


「うん、1時までなら大丈夫。差し入れか何か?」


「ん。作ってくる」


「行ってらっしゃ〜い」


彩原に伝言して一旦家に帰った。


家庭科室は3年が使ってるから無理だし、自宅で作ってくるほうが良いだろ。


実はうちのクラス以外にも作業が難航してるクラスがちらほらある。特に思い出作りで凝ったものを作る3年は気合いがすごい。なので3年の邪魔はできない。


おにぎりで良いかな……男子高校生は食べ盛りだから、沢山作らなきゃ。料理人さんにも手伝ってもらおう。



こうして差し入れ作りに没頭し、学校に戻ったのだが……そこには彩原以外、誰もいなかった。

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