《MUMEI》

マニエッサ群島へ向かう間もクロウは謝り続けていた。ルシアとしてはもうそんなに気にしていないこともあったが、操縦しているのでそちらに集中して欲しかった。

「本当にごめんね、あーもう、僕ったら…」

「そんなことより前向いて操縦してよっ」

タメ口に慣れてきたルシアは、付近にモンスターが来ないかクロウの後方で周囲を見渡しながら、クロウに返事する。当のクロウ自体は余所見しながらも操縦できるほど、操縦の技術は高い。ルシアは付近にモンスターが居ないと分かり、クロウの隣の席に戻る。

「うぅー、けどさぁ…。てか髪邪魔。」

クロウは前髪を上で束ねる。露わになった瞳は大きく綺麗な金色をしていた。そのため納得していない、不満気な表情がわかるようにもなった。

「引きずりすぎ。もう気にしてないよ。」

「ルシアはいい子だよね。優しすぎる。」

騙されそう、と加える。そして柔らかな笑みを浮かべた。操縦しながらのため、はっきりとは見えなかったが、やや口角が上がったように見える。

「けどね、そういうの嫌いじゃない。」

何の邪気もない、純粋な誉め言葉。恥ずかし気もなく、堂々と言ってのけるクロウに、ルシアは目を見開いて驚く。

「ルシア見えてきたよ。マニエッサ群島だ。」

青い海に浮かぶ島々が見える。そして船のレーダーにはモンスターの反応が現れた。

「ここに船を止めて召喚獣で応戦しよう。」

「今回の指揮はルシアだ。従うよ。数は30、大半は中級…」

ルシアとクロウは門を開き、召喚獣を喚び出す。ルシアはセルエル、アルギエル兄弟。そしてクロウは、同じ天界の…翼を持つ騎士を召喚した。

「【白弓士】フェルエル。」

深い青の長い髪を後ろに結んだ騎士は、純白の白い翼と同じ色の弓を携えている。最上級の称号、【白弓士】。そしてフェルエルは、驚いた顔でセルエルを見つめている。

「セルエル様…!?」

「フェルエルですか。“様”はよしてください。此方では1召喚獣ですよ。」

聞くに天界の聖剣騎士団での上司と部下だそうだ。相棒として戦場に立つ仲で、騎士団随一の弓使いという。



3人はふわりを飛び立つ。最上級の火力を前に竜の群れは為す術などなかった。



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