《MUMEI》
召喚士ルシアと青天の策士
ルシアがマニエッサ群島へ向かっている頃、王都ではラフェルが訓練に勤しんでいた。フェッセン征空団と違い、大所帯の王都警備隊は、団体行動が重要となる。

「あの、ルシアからは何か来てますか?」

休憩時間にラフェルはトーラスに気になっていたことを尋ねる。父親なら何か届いていてもおかしくないと考えたのだ。

「んー?特にはきてねぇな。ほら、養成所時代もそんなんだったからよ。」 

落ち込むな、と付け加える。

「そうでしたか…。」

ラフェルは何通も手紙を送っている。カノンからはまめに返信がくるが、ルシアからは各地を飛び回っているせいか、なかなか返信が来なかったのだ。

「トーラス、書類…提出期限、今日だぞ?」

ルナがトーラスを呼びにくる。訓練所によく顔を出すのは良いが、いつも書類をほったらかしている癖は直らないようだ。トーラスが去ったあと、ルナはこっそりラフェルに耳打ちする。

「近々、フェッセンから…戦術授業があるらしい。」

じゃあな、とルナが立ち去る。ラフェルはルシアとの再会が近いと知り、密かに喜んでいた。




帰還したルシアにもその情報が伝わった。参加するメンバーの選考中で、クレッセルにそのことでクロウと共に呼び出されたのだ。

「ほんで、自分は強制参加やから…。で、コーネリアには副団長やし残ってもらうとして…。ルシアくんは参加したいよな?」

他のメンバーには聞いて回ったらしく、残るは離れていた2人だけだった。

「…できれば、参加したいですが…。新参者が出しゃばっても…」

「ホンマか!?よかったぁ…誰も団長のお守りなんてごめんや、ゆぅてなぁ…」

…どうやら全員に断られたらしい。何を考えているかわからない団長は、やや避けられている存在なのかもしれない。

「んで、クロウに拒否権とかないから。よろしゅうな。」

クロウはどうやら強制参加のようだ。講演するクレッセルは別として、クロウは参加してもしなくても、大きな差はないだろう。しかし、クロウもクロウでこうなることがわかっていたらしく、あっさり承諾した。

「…わかりました。ルシアもよろしくね。」

2人は団長室を去る。久しぶりの王都にワクワクするルシアと、それを穏やかな笑みで見守るクロウであった。

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