《MUMEI》

少年はこちらに気付いた様で、ルシアたちを睨みつける。アジトからは少し離れているため、かろうじてモンスターは居なかったが、ここは危険だ。ユーリやルシアとしては、村なり安全な場所に連れて行きたいところであった。しかしその思いに反し、少年はアジトの方向に歩き出したのだ。慌てたルシアたちは彼を追う。時折少年は振り返って、ついてきているか確認しているようだった。木々を分け入ってずんずんと進んでいく。やがて少年が立ち止まり、ルシアたちが追いつくことができた。

そこには木造のアジトらしきものと、それの周りにいるウルフの群れ。モンスターたちは中級程度でルシアやユーリたちが追い払うことは簡単だ。ルシアたちは早速任務に取りかかる。10分足らずで終えたルシアたちの元に少年がやってきた。辺りを見回し敵が居ないことを確認して、アジト跡に入っていく。崩れ落ちてもおかしくない場所に入るのは危険だ。ルシアたちも跡を追う。

「あった!」

少年は、壊れかけの戸棚から紋様の入ったバッチを見つけ、目を輝かせている。一言も発しなかった少年がやっと口を開いたのだ。ここが盗賊団のアジトだったこともあり、ユーリたちは貴族のものか何かだろうと決めこんでいた。その時だった。バッチのあった戸棚がぐらりと揺れ、少年に向かって倒れかかる。荒廃していた為、有り得ないことではなかったが、少年はバッチを見つけた喜びで浮かれていたのだろう、反応が遅れてしまった。

ユーリがハッとした時には、ルシアが先に動きだしており、少年の手を引き、抱き留める。その直後、少年のいた場所には崩れた戸棚が降り注いでいた。

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