《MUMEI》

少年は突然のことで呆然としていた。ルシアの腕の中で固まっていたが、我に返ったのだろう、震えだして次第に大粒の涙がこぼれ落ちる。この場所は危険と判断して、ルシアたちは協力して少年を運び出した。とりあえず近くの切り株に座らせ、持っていた水筒の水を与える。


しばらくして落ち着いた少年は水筒を握りしめ、語り出した。彼は盗賊団に居た召喚士で、半ば脅され入ったのだが、皆面白い人ばかりなので、気に入っていたという。アジトを襲われたときはまだ下級召喚獣ばかりで、逃がすのが精一杯であり、ルシアたちの様な討伐隊が来るのを待っていたという。


「それで、このバッチは盗賊団の紋様入りのバッチ。オイラの宝物ってわけさ。」

褐色の肌にやや露出の高い衣装は、この地域特有の模様が描かれている。服にバッチをつけ、満足しているようだ。

「オイラはこれを取り返したくってずーっと待ってたんだ。ありがとな、兄ちゃんたち!」

盗賊団だ瓦解してからは、近くの山小屋を拠点に、町に行っては傭兵の真似事や、荷物運びで金を稼ぎつつ、討伐隊が来るのか噂を調べて回っていたそうだ。彼にとっては盗賊団が一番であり、バラバラになってからもその証が欲しかったのだ。念願叶い、討伐隊としてルシアやユーリが現れた。少年にとってはルシア達がヒーローと言えるだろう。




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