《MUMEI》 「さて、兄ちゃんは次はどこに行くんだ?」 少年は水筒を返すと、切り株から降りる。ルシアが帰るだけだと伝えると、そっか、と素っ気ない返事が返ってきた。それまで黙っていたユーリが口を開く。 「君そこ行く宛あるのかい?ここに残る必要もないようだし、その様子だと満足な生活しているようにも見えないけど。」 少年は一見、きちんとしたこの地域の服を着ているようにも見えたが、所々ほつれがあり、褐色の肌には艶がなく、擦り傷などが手当てされることもなく放置されていた。 「だ、大丈夫さ。オイラは…」 そこまで言った時に、少年の腹の虫が鳴る。大きな音はちゃんとルシア達にも聞こえていた。少年は目をそらす。苦笑をしながらユーリが少年に語りかける。 「君さえ良ければうちにこないかい?団長もきっと歓迎してくれるはずさ。」 少年ははっとしてユーリを見るが、うーんと黙ってしまう。ルシアたちの召喚獣を見て尻込みしてしまったようだ。ユーリがあと一押しだと、ルシアに目配せする。ルシアがうなずいて、少年に話しかけた。 「団長もみんなも良い人ばかりだよ。だから、ね。」 悩んでいた少年だったが、「命の恩人が言ってくれるなら!」と団への参加を決意する。少し大袈裟であったが、ルシアたちは彼を船へと案内した。 「僕はユーリ、こっちがルシア。君の名前、聞いてなかったね。」 船へ向かう途中、ユーリは少年に名前を聞く。そして彼から返ってきた言葉に驚くことになる。 「オイラはライオネル。こう見えても23だぜ。」 彼の名はライオネル。歳は23。背丈はルシアより低く、口調も幼い。さらには兄ちゃんと呼んできたことを含め、まだ若いと考えていたが違った。 「…年上…?」 「これは驚いたな。」 2人の困惑を余所に、ライオネルは船の携行食を食べ漁る。彼を紹介されたクレッセルたちもまた同じように驚くのだった。 . 前へ |
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