《MUMEI》

寮に入った瞬間に
着信音が
鳴り響いた。


「あ、お義母さんからだ」


そう言ったら
蓮華くんの顔が
青ざめたように
見えたけど……
気のせいかな。


「もしもし」


『桜〜!初・学校はどうだった〜?』


「皆良い人達ばっかりだったよ!友達になれそう」


『そう〜!それは良かったわー!でも男には気をつけなさい。男は皆狼よ』


「……?うん、わかったー」


後半なんだか
ドスのきいた声に
なった気が……


『友達できそうなら良かったわー』


あ、元に戻った。
さっきのは聞き間違い
かな。


『授業にはついていけそう?寮では上手くやれそう?狼に食べられてない?』


「うん、大丈夫……」


狼に食べられる?
なんのことだか。


『まあ大丈夫そうで何よりだわ。私は仕事忙しくて、なかなか構ってあげられないけど……いざというときは百合坂や紅薔薇もいるからね!周りに頼ることを忘れないのよ!』


「心配性だなぁ、もう……私は大丈夫だよ」


力強く言えば、
それ以上は何も
言ってこなかった。


やがてぽつりと
言葉が聞こえた。


『……心配なのよ。あんたは母親に似て、一人で抱え込む癖があるから』


お義母さんの言う
『母親』とは、
私の実母のことを
指すのだろう。


会ったことがない
から分からないけど
私は実母に
似ているらしい。


「一人で抱え込むことはしてないよ?」


『自覚してないだけで結構抱え込んでるわよ。このニブチンが!』


何故に怒られたの?


『まあとにかく、周りに甘えることを忘れないように!言いたいことはそれだけだから!じゃあ切るわね!』


ぷつり。


私が何か言う前に
電話が切れた。



「理事長はなんて?」


「うーん、友達できそうかーって。あと狼に食べられないようにって言われたけど、この学園狼飼ってるの?」


「………は?んな訳ねぇだろ」


馬鹿かこいつって
感じの呆れた
目で見られた。


じゃあさっきの
なんだったんだろ?


心当たりがあるのか、
蓮華くんは
ため息をついた。


「狼って……この場合、男を指すんだよ。理事長は男に気をつけろって言いたいんじゃねーの?」


「蓮華くんも男の子じゃん」


「……はああああ………」



本気でわからない
といった主旨の
発言をすれば
先程の小さなため息
とは比べ物に
ならないくらい
盛大なため息を
吐かれてしまった。



えええ……?
なんで壁に手をつけて
駄目だこりゃ、
みたいな視線
送られたの!?



その後も理由は
説明してもらえず
やがて諦め、
自室に向かった。

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