《MUMEI》

「さくらーん!!あっそぼー♪」


「ひゃあっ!?美鞠さん!?」


自室に入ったら
中から美鞠さんが
飛び出てきた。


いやいやおかしい!
鍵かけてるはず
なのになんで
中から美鞠さんが
出てくるの!?


「あの、ここ私の部屋で合ってますよね?」


「うん!正真正銘さくらんの部屋だよ!ただ単に私がピッキングして侵入しただけで!」


「侵入したの!?」


家主より先に
入っちゃ駄目でしょ!
それ以前に
ピッキングしちゃ
駄目でしょ!!



「私のリサイタルどーだった!?校長先生のつっまんない長話より断然良いでしょ!?」


動揺してる私には
構わず椅子に
どかっと座る
美鞠さん。


やること無茶苦茶
なんだから……


てかリサイタルて。
感想求められても。



「確かに校長先生の話は長くて眠くなるけど、割り込むのは良くないよ。最後まできちんと聞かなきゃ」


苦笑混じりに
正論をぶつけた。


そしたら、
思いもよらない
返答が返ってきた。



「だってそうでもしなきゃ眠っちゃいそうな子がいたんだもん!先生からちょうど見える位置にいたから、ああでもしなきゃ先生にバレちゃうと思ったんだー」



しれっと言う
美鞠さんだけど、

はちゃめちゃな
やり方だけど、


美鞠さんの行動には
ちゃんと理由が
あったんだ。



『屋上の下手くそなライブを……』


『応援団に割り込んで……』



きっと全部に
理由があるんだ。


今の話を聞いて
率直にそう思った。



美鞠さんは
噂で聞くような
変人じゃない。


「……なんではちゃめちゃなやり方しかしないかなぁ」


「えー?なんか言ったー?」


美鞠さんに
聞こえないように
小声で言ったのに
耳に届いてしまった
らしい。


慌ててなんでもない
と言った。



変な方向だけど、
優しさからの
行動だったんだ。


なんて
分かりにくい。


なんて
暖かい人。



「で、私のリサイタルどうだった!?上手かった?上手かったよね!?」


「……ごめんね。あんまり頭に入ってなかった」


「えーー!?なーんだぁ……」



がっくりと
肩を落として
落ち込む美鞠さん。


そんな美鞠さんに
優しく微笑みかけた。



「また今度、聞かせてね」


そう言ったら
ショックな表情から
一変して
喜んで尻尾を振る
犬のような
笑顔でこちらを
向いた。



「もっちろん!」

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