《MUMEI》
血まみれ美術室
「とりあえず、下の様子を見るか?」
階段へ向かおうとするユウゴを、ユキナが止めた。
「なんだよ?」
「そっちは危ないから、こっち」
ユキナはそう言って階段とは逆の方向へ歩き出した。
しかし、そちらは行き止まりだ。
「おい、そっちに階段ないけど?」
「うん。知ってる」
しかし、ユキナは止まらない。

 階下では、新たに複数の悲鳴と破壊音が響いてきた。

「知ってるって……。じゃあ、どこ行くんだよ?」
「あっちに非常用の梯子があるの」
「梯子?」
「そう。校舎の裏側にあるから気付かれにくいと思うよ」
 二人が廊下の端までたどり着くと、たしかに突き当たりの外側に梯子が見える。
ずいぶん錆ついているが、使えそうだ。

「じゃあ、わたしから降りるね」
そう言うとユキナは廊下から体を乗り出して、梯子に足をかけた。
その後に、ユウゴが続く。

 二階の廊下部分まで降りたユキナは、そこで足を止めた。
「いるのか?」
ユウゴが小声で聞くと、ユキナは無言で頷き、そして廊下に下りようと体の向きを変えた。
「お、おい」
「平気、平気」
やけに余裕を見せながらユキナは廊下に降り立った。

 ユウゴは慎重に数段梯子を降り、その廊下の様子を見た。

そこに動く人影は見えない。

 代わりに、一つの教室の前に折り重なるように倒れている警備隊の姿を発見した。
ピクリとも動かないところをみると、すでに絶命しているようだ。
「なにがあったんだ?」
疑問を口に出しながら、ユウゴも廊下に降り立つ。
「やった、大成功!」
嬉しそうに、その教室を覗き込みながらユキナが言った。
「なにが?」
ユウゴも、同じようにその教室の中を見る。
そして、呆然と立ち尽くした。
「うわー、なんだ、これ?」
 そこは元々は美術室だったらしいが、何の部屋だったかわからないほど、大量の血が飛び散っていた。

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