《MUMEI》

どうやら雫さんは
椿さんの部屋へ
連れて行ってた
らしい。


椿さんの服の
ポケットから
部屋の鍵を取り出し
鍵を開け、中に入る。



玄関から部屋へ
向かうと
高級そうな家具や装飾が
あちらこちらに
施されている。


白を基調とした
机や椅子や棚の縁は
金色の線が入ってて
高級さが際立ってる。



それらの家具が設置
されている
さらに奥に同じく
白と金が交錯した
値が張りそうな
ベッドに
椿さんをそっと
降ろした。



「雫さん、スマホ落としたでしょ?持って来ようか?」


ふと訊ねてみたが
首を横に降った。


そしてどこからか
出したペンで
椿さんの部屋に
あったノートに
スラスラと書いていく。


え、それ椿さんの……



勝手に使って良い
のかな……と思って
しばらく雫さんを
眺めていたら、
ばっとこちらに
ノートを見せてきた。


『あとで自分で取りに行くから大丈夫。私はここで椿くんを看てるけど、桜ちゃんは無理にここにいなくても良いからね』


見せられたノートには
そう書かれていた。


椿さんが起きたときに
雫さんがいたら
また倒れないかな?


それとも出会った
ばかりの私と違って
雫さんなら
ある程度大丈夫
………とか?


どちらにせよ、
ここは雫さんに
任せた方が良いかな。



「私がいても邪魔になるだけだし、雫さん、椿さんのことお願いします」


ぺこりと頭を下げて
部屋を出た。

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