《MUMEI》

「はぁ……情けないなぁ」


左腕で目を覆って
ぼそりと呟いた
椿くんに目を向ける。


今にも
泣いてしまいそうな
弱々しい声で
言葉を紡ぐ。


「女性恐怖症を克服するために共学を選んだのに、こんな有り様じゃ目も当てられないよね。雫さんや桜さん……周りの女の子に迷惑かけちゃうし、早いとこ治さないと………」


私は慌てて
励まそうと紙に
ペンを走らせるが
その手がふと止まる。


椿くんは目を
腕で隠しちゃって
紙を見せても
意味がない。


近づいて無理に
見せても
また気絶しちゃう
可能性もある。



……こういうとき、
もどかしくなる。


一声かければ
すぐに気付いて
くれるのに
それができない。


励ましの言葉でさえ
私の口から
出せないのは
苦しい。


でも、それ以上に
声を出したら
またあんな状況に
なってしまうんじゃ
ないかって思って
恐くて仕方ない。



私も椿くんも
臆病だ。



結局それ以上
言葉を紡ぐことは
できなかった。


椿くんから
勝手に借りた
ノートを
白と金の交錯する
机に戻して
部屋から出ていった。

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