《MUMEI》

雫さんが
部屋を出ていって
すぐに雫さんが
使ってたノートを
探した。


馬鹿だ。
声を出せない
雫さんの前で
目を覆ってたら
唯一の意思疏通手段が
絶たれちゃうのに。



「あ、あった!」


幸いそれは
すぐに見つかった。


机の上に置かれた
新品のノート。
本当は宿題用
だったけど
また買えば良い。


ノートの中を
ペラペラと捲る。


数ページ目で
手が止まった。



『椿くんなら治せるよ。だから』


きっと励まそうと
してくれたんだろう。


心に温かいものが
広がったのち
すぐに疑問へと
形を変えた。


「だから…………何?」


だから、に続く
言葉が気になった。


僕を励ます言葉を
投げ掛けようと
したのかな。


雫さんは優しいな。
ううん、雫さん
だけじゃない。
桜さんも僕のことを
気遣ってくれてる。


美鞠さんは……
ごめんなさい。
僕には優しさが
見えません。


美鞠さんだけは
僕のことを
からかってる
からなぁ。


雫さんと桜さんは
優しい。
けどその優しさに
甘えちゃ駄目だ。



この学園の
生徒の多くは
社長令嬢・令息だ。


故に、由緒正しき
お家柄の家は
政略結婚も
ざらにある。


僕の実家も
その内のひとつで、
婚約者はいないけど
親の決めた相手と
結婚させられるのは
昔から決まってる。


それについては
何も言わないけど、
女性に近付いただけで
気絶しちゃう僕と
結婚させられる相手が
あまりにも可哀想だ。


だから僕は
女性恐怖症克服のため
小学・中学と
男子校だった学校を
飛び出して
共学のこの学園に
入学したのだけど……



結果は見ての通り。


もっと努力しなきゃ、
って思うのと同時に
周りに迷惑かけちゃ駄目
だよなぁって
思うから、なかなか
前に進めない。


「このままじゃ駄目だって……頭ではわかってるのになぁ」

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