《MUMEI》
入学式
現在の時刻は午前7時12分。

今日は月曜日。
中学校の入学式だ。


「…はぁ……。だるいなぁ。」


私はため息をこぼし、新しい制服に着替えた。

玄関で靴を履き、
誰もいない家を出て鍵を閉める。


「行ってきます。…なんてね。」


学校に着くと、私と同じ新入生が、
落ち着かない様子でざわついている。

『わぁ〜、緊張してきたー!』

『お〜今野じゃん。久しぶり〜。』

……うるさいなぁあ。
こういう周りからするとたわいもない会話も、
私の耳には雑音でしかない。

ドンッ

いった。


『あ、すいません!』


なんだ男子か。めんどくさ。


「うん。私こそごめんね。
ちゃんと前みて歩いてなかったから。」

『あ、はい!すみませんでした!!』


ん。この人ほっぺから血出てる。


「?ほっぺ血出てるけど、大丈夫??」

『え、あ…さっき転んじゃって……』


そう言いながら照れくさそうに笑う。
いや、ほっぺけがするってどんなこけ方したんだろう。


「クスッ。ちょっと待ってね。」


そう言って絆創膏を取りだし、
けがをしているところにはってあげた。


「はい!これで大丈夫かな?」

『え…!あ、ありがとうございます!!』

「うん!気を付けてね!!」

『はい!ホントにありがとうございました!』


そう言って彼は、友達と走っていった。

…面白い人だったな。


『なー、さっきの女子知り合い?』

『いや、ちげーよ。』

『可愛かったよなー!!』

『だよなー。超可愛かった!』


その声は、私の耳には入らなかった。

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