《MUMEI》
家庭科室爆発
 壁や床、窓に天井など、あらゆるところに血がベットリとついている。
さらに、入口から数十センチ先には天井から刃物がぶら下がり、揺れていた。
「部屋中、血まみれで蜂の巣みたいに穴だらけ。なにやったんだよ?」
「なにって。部屋暗くして、入口から入ったらこの刃物が勢いよく向かってくるようにしただけよ」
「へえ。じゃ、この銃撃の後は?」
「知らない。驚いたこの人たちが勝手にお互い撃ち合ったんでしょ」
ユキナは言いながら、廊下に転がった警備隊の死体を探り始めた。

「……で、なにやってんだよ?」
眉を寄せ、ユウゴは聞いた。
「この服借りたらさ、目立たないと思わない?」
「……マジで?」
「この期に及んで、何ビビってんの」
「いや、ビビってるわけじゃなくて………。まあ、そうだよな。たしかにその服なら動きやすいかも。奴らだって、全員の顔知ってるわけないだろうし」
「でしょ?だから、なるべく汚れてないやつ探そう」
「……ああ」
 ユウゴは頷きながら、死体の傍にしゃがみ込んだ。

「……なあ」
汚れが少なそうな服を探しながら、ユウゴは口を開いた。
「なに?」
「おまえ、ここに来てから、なんかやけに余裕があるような気がするんだけど。てか、なんであそこに梯子あること知ってたんだ?」
「ああ。だってわたし、ここの卒業生だから」
「え、マジで?」
「うん。だから、この学校の構造は知ってるの」
「へえ、そりゃ頼もし……」
ユウゴの言葉を遮って、向かいに建つ校舎の三階部分が爆発した。
「……っくりした。なんだ?」
「あそこ、家庭科室。ガスの栓を開けっ放しにしてたから」
ユキナは平然とそう言うと「これにしよう」と、動かぬ警備隊の体から上着を剥ぎ取った。
「ほら、ユウゴも早く」
「あ、ああ」
ユウゴは頷くと、適当に上着を選んだ。
ついでに防弾チョッキももらっていく。

「さあ、次行こう」
なぜか元気になってきているユキナの後ろ姿を眺めながら、ユウゴも続いた。
家庭科室からは炎があがっていた。

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