貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い《MUMEI》二人の城。
わたしは高層マンションを見上げながら、ただ固まり、立ち尽くして居た。
それは、駅と喫茶店のちょうど中間地点。
わたしがフラフラになりながらも買い物を遂げた、あのタワレコにも近く、地の利に恵まれ過ぎてるとしか思えない建物だった。
アキがわたしの裾を引っ張って、入口まで連れて来る。
「ちょっと待ってて。後であんたにも教えるから」
そう云って、オートロックを解いて居る。
「こっち」
ソワソワして、落ち着かないわたしをエレベータへ導く。
迷わず"17階"を押すアキ。
「どした?緊張でもしてる?」
「…うん」
「あー、家賃とかの心配?」
「…うん」
「いらないよ」
わたしは全力でアキを向いた。
エレベータが少し揺れた。
「いらないよ?だって持ち家だもん」
そう云い放つアキを、わたしはじっと見つめるしかなかった。
ほどなく17階に着く。
「お金の心配はいらない。見返りを求める気も無い。ただ、あたしの友達として、傍に居て欲しいだけ」
アキの想いに応えてあげることが、わたしの義務なんだと実感した。
一緒に居たい。
ずっと、
一緒に居たい。
安住の地を、見つけた気がした。
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