《MUMEI》
死夢と覚ゆ夢
空気に似た環境として辺

り一帯に漲りながら、お

化けの少女に関する知識

を誇り得る者の視線さえ

変幻自在に欺くお化け娘

の彼女は人間には看破し

難い擬態能力を備えて恰

も天女の様な女性の姿に

擬態してウチのクラスの

男子を誘惑し、この世と

あの世の境界線の外側の

基地外じみた性愛の世界

へと拉致してしまった。

誰しも死ぬ限りに於て同

じではあるが、出来れば

死は誰の死であっても避

けて通りたいと思った。

放課後の教室の人馬の屍

が類々と横たわるような

凄惨な殺人現場に佇む裸

のお化けの少女は白目を

剥いてピクピクして一生

を終え様として「夢だ、

夢に違いない」と口走る

男子生徒に止めを刺して

瞼を閉じさせていた。


その仕草は犠牲者への

哀悼の意味を示す仕草と

思えたが、「魚の腐った

様な目をしおってからに

気色悪いから」云々と語

るお化けに否定された。


凄惨な殺人事件の現場と

化した放課後の教室を

一刻も早く立ち去ろうと

思うのであるが、2、3

人の男子はまだピクピク

しているからお化け娘に

伝家の宝刀を投げた。


ぴょんと跳ねて回転した

彼女は意味もなく格好を

付けて伝家の宝刀を受取

ると鞘から抜いた。

しゅるしゅるしゅる

玉響(たまゆら)と云う名

の漢字の読み方は本来、

ド派手な擬音語と云う事

を改めて追認した次第。

伝家の宝刀を鞘から抜く

瞬間ピカっと垂直に発生

した閃光で視力を失う。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫