《MUMEI》

皆、私の言葉をまるで信じられないとでも言いたげに聞き入ってる。あたってたのは本当だ。あのクソ教師、実行委員(ていうか主に私)に全部押し付けて自分は定時で仕事終わらせやがるんだから。


定年間際の老人教師は皆あんなんなのか、と軽く失望したよ。と同時に憤怒の心がメラメラ燃え盛ったよ。


つまり、まあ、元々のキツい言い方に加えてストレスが溜まってあたっちゃったんだよな。非常に申し訳ない。けど、こんなとっても面白いサボりスポットを教えてくれないなんてひどいよな。


「じゃ、僕も少し遊んでくよ。ストレス発散に良いゲームはどれ?」


「あ、ああ、レーサーとかボクシング系とか……」


「お、あれか。やり方教えてくれ」


「おお……って、まさかお前ゲーセン初めて!?」


「悪いかよ」


「マジかよ!ふっるいなー!じゃあよーく見とけよ?これは……」


いつの間にか賑やかになる僕の周り。彩原も近くに来て様子を伺うが、ケンカになることはなかった。


クレーンゲームでゲットした人形を赤坂に持ってもらい、レーサーゲームで吉村と対戦。かなり白熱した。


「うわっ!?本当に初めてかよ!?こんな技見たことねーぞ!」


「うっし、勝った!」


もちろん私の勝利。ゲームでも負けるということはありえない。


「じゃあ、パンチ力勝負したあと学校に戻るか」


学校、のワードが私の口から出てきたとたんに各々の反応を見せる男子達。戸惑う者、不機嫌そうに顔を歪める者、実に様々だ。


でも、そんな彼らの反応なんか無視してニッと笑った。


「さっき作ったおにぎりが冷めちまうからな」


そう言った瞬間に動揺が伝わってきた。何に動揺してたかはあえて考えない。


「まさか、さっきいなくなってたのって家に帰ったんじゃなくて……」


「家には帰ったよ。昼飯のおにぎり作るためにな」


さらっと真実を告げてやると、逆に皆が申し訳なさそうな顔をしてこちらを見ていた。謝罪の言葉が出てくる前に畳み掛けてやった。


「男の作った料理なんざ食えねぇなんて言うなよ?」


吉村の耳元で囁くと、暫しの沈黙が訪れる。そして、


「バーカ!おにぎりは料理のうちに入んねーよ!」


にかっと笑っていつも通り話してくれた。



謝罪の言葉なんかなくても、心が通じる。


男の友情なんてそんなもんだろ?

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