《MUMEI》
ラブハプニン……グ?
「スマン橘!ほんっとーにスマン!!」


月曜日、教室に入るなり開口一番に謝罪を述べる桐生。しかも土下座してる。


「……おはよう桐生。謝罪の動機が分からないんだけど」


私の知らぬ間に失礼なことをされたのか?いやでも全く身に覚えがないんだが。


教室で談笑中のクラスメートが全員何事かとこちらを見ている。


「彩原に聞いた。休日にあったこと。俺がいなかったせいで橘一人に押し付ける形になっちまった。本当にスマン!」


どうやら土曜日にあったハプニングのことを言ってるようだ。


「別に仕方ないんじゃないか?お前は家の用事で来れなかったんだから」


「いーや、俺のせいだ!だって、だってよぉ……」


なんで桐生のせいになるのか、理由が全くもって分からない。そう思って桐生を宥めると物凄く真剣な表情で私の言葉を否定し、直後、怒られるときの子犬みたいにしゅーんとしていてドキッとした。


ま、また動機が。なんなんだこれは。


自分でも知らないうちに頬が赤くなっていたそのとき、桐生がようやく理由を口にした。


「お前、俺と彩原くらいしか友達いないから皆で仲良く物事に取り組むのには無理があっただろ?その点、俺なら橘と違って多少は上手くやりくりできるからさ、だからお前一人に任せて悪かったと思って……」


「よしわかった。物理的にボコられるか精神的にメッタ斬りされるか選ばせてやる」


「あれ!?めっちゃ怒ってる!?」


そりゃ怒るわ。つまりこいつが言いたいことは、友達いなくてついこないだまでボッチだった私にクラスを統率し、尚且つ仲良く作業を進行することは無謀だってことだろ?失礼にも程があるわ。


「僕だってやればできるんだよ!年齢=ボッチ歴な僕でもやるときはやるんだよ!!」


ボッチなめんな。努力すればなんとでもなるっつーの。現にちゃんとやれたし。この馬鹿、変に心配しやがって。

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