《MUMEI》
不法浸入。
「やあ、待っていたよ。早速、佐久間新斗の元へ行こうか」
午前0時、新斗の家の前に集合で、僕は埜嶋さんを連れてそこへ向かうと、既に小鳥遊晶はそこにいた。
「まさか説得が上手くいくとは思わなかったよ」
正直、僕もそう思ってた。
「あなたが………小鳥遊晶さん………?」
「そうだよ。話は全部聞いたんだね」
「…………思ったより、普通な感じね」
「神名薫君さ、ワタシのことどう説明したの?」
「言わなくてもわかるんじゃないの?まぁ僕は間違ったことは言ってないつもりだよ」
どういう説明をしたかはまぁ、割愛する。
「よし、じゃあ行こうか」
「えっ、ちょ待って!今新斗はどうしてるのさ」
「寝てるよ」
「他の家族は?」
「母の佐久間瑶子は寝てしまっているようだけど、姉の佐久間翔子は起きてるね。父の佐久間和一はいないようだ」
「そんなこともわかるの?」
「まあね。伊達に世界を一つ創ってないよ」
「なんてやつだよ………で、どうやって中に入るの?」
「正面からに決まってるじゃないか」
「でもこんな時間よ?さすがに迷惑になるんじゃ………」
「ところがどっこい。ワタシと神名薫君は他の人には見えないから問題ないよ」
「あ、そっか」
「そんな大事なことくらい覚えときなさいよ………私はどうしたらいい?」
「ワタシと接触してれば君も見えなくなるよ。ほら」
小鳥遊晶は埜嶋さんに手を伸ばし、躊躇いながらも埜嶋さんは手を握った。




「警察官の家に浸入って…………すごい怖い」
「もっとすごいセキュリティが張り巡らされてると思っていたけど、そういうわけじゃないのね」
小鳥遊晶がドアノブを握った瞬間、ガシャガシャンと音が鳴り、まるで自分の家に帰ってきたかのように容易く扉を開けた。
玄関はセンサー式で、僕らが入ってきても電灯しないということは、僕らは無事姿を隠している。
玄関からすぐの硝子張りの扉を覗くと、新斗のお母さんらしき人が机に突っ伏して寝ていた。机の上にラップがかかった晩御飯を見る限り、お父さんを待っているようだ。
リビングのすぐそこには二階へと続く階段があり、新斗の部屋は二階にある。
上がろうとすると、トントンと階段を下りるような音がした。
僕と埜嶋さんは反射的に息を呑み、隠れようと動き出すが、小鳥遊晶に襟を掴まれた。
毛布を持った新斗の姉、瑶子さんは僕らの目の前を横切り、リビングへ入っていった。
緊張が切れ、大きく息を吐いた。
「彼女らには今ワタシ達は見えていないよ。さっき言ったのにもう忘れてしまったのかい?」
「眼前にいても気付かれない感覚…………慣れるわけないじゃない」
「トラウマになりそうだなぁ……」
誰にも気付かれないとか、すごい怖いからね?
あれよこれよと、この世界の新斗まであと少し。

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