《MUMEI》
埜嶋雪美の覚悟。
新斗の部屋へ浸入を成功した。
ベッドに横たわる新斗は寝息を発てている。
「さて、ここまで来てから言うのはあれだけど、ちゃんと覚悟はできているかい?」
「もちろん」
「君には聞いてないよ。埜嶋雪美さん、君に聞いてるんだ」
「―――――――――………………」
埜嶋さんは答えず、静かに視線を下ろした。
「正直に言ったら、どうしてこんなことになったのか戸惑ってる」
「え………でもそれは」
「説明は聞いたよ。前の世界の私が佐久間君に酷いことを言ったから、世界が改変してしまったって。でもね、私からしたらやっぱりそれは身に覚えのない事なのよ…………」
そうだ。
確かに、この事態の発端は埜嶋さんだが、その自覚は一切ない。
この埜嶋さんは同一人物ではあるけど、前の世界の埜嶋さんとは、どこか違うんだ。
身に覚えのない事の為に、人は責任を取れない。
「でもね、不思議なのよね」
「不思議?」
「神名君に気付かされたこの気持ち、本物かどうか、まだわからない。でも………」
胸に手を当て、そっと目を開け、新斗を見つめた。
「顔を見るだけでもドキドキする。恋と呼べるものなら、私は佐久間君に会って、ちゃんと確認したい」
「へ、へえー……」
随分ドストレートに言うもんだ。本人には聞こえていないだろうが、僕らがここに居るのを忘れているんじゃないだろうか。
「あなた達の話を信じてもいいわ。私もあなた達のすることに協力するわ」
その言葉を聞くと、小鳥遊晶はニヤリと笑った。
「覚悟はできたみたいだね。じゃあ早速説明と行こうか」

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