《MUMEI》

−何だろう…すごい浮遊感?……でも、凄く気持ちいい…−


ふと綾乃が目を開けると、視界は一面の蒼、すべてが水だった。


−わぁー、凄くキレイ…何だっけ、テレビで見た南の海とか、そんな感じ−


ゆっくり自分の体は沈んでいくが、綾乃はこれが夢であると認識し、この蒼の空間を楽しんでいた。
口を開ければ水泡が立つため水中だとわかるが、息苦しさは全く無い。


だが不意にさざ波がたち、一度だけ聞いたことのある声が響いた。


『せや、その水の奥、君は何を持ってるん?』



その声が立つと同時に突如黒い無数の手が綾乃に絡み付いた。

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