《MUMEI》
僕は彼女に夢中
僕こと塚原ヒカルが見ていたのは、艶やかな腰まである長い黒髪。

その容姿は、美しく、清楚可憐な大和撫子風の女の子・天川希美。

だけど、それは、黙っていればの話だった。

急いでいる様子の彼女に他の高校の男子が声をかけた。

「天川希美さん、いつも見てました。俺と付き合って下さい。」

そう言って、彼女の前に立ち塞がったんだ。

すると、彼女は、

「急いでいるんだよ。そこどけ。」

そう言って、その男子高生に、鞄を思いっきりぶつけたんだ。

男子高生は、彼女のあまりの腕力にぶっ飛び、そして、僕は、巻き添えになり、下敷きとなってしまった。

他の同じ学校の生徒たちは、

「他校生だよな?中身知らずに、告白したのか。命知らずだよな……。」

そう囁き合っていた。

「おい、ヒカル。大丈夫か?」

そう言って、他校生の男子をのけて、僕を助け出してくれたのは、幼なじみで親友の司馬雪之丞だった。

「ありがとう、雪。」

そんな僕を見ている奴が、もう1人。

「また、お前、天川希美をボォ〜ッと見てたんだろう?」

呆れた声を出して、そう言ったのも、幼なじみで親友の朝倉涼介。

「だってさ……。」

「なぁ、ヒカル。天川希美だけはやめておけよ?ありゃ、すでに女じゃない。」

そう言う涼介だったが、僕は、言い返した。

「天川さんだって、女の子らしいところあるよ。」

「どういうところが?」

そう聞く涼介に、僕は答えた。

「男らしいところとか……。」

「…………。」

「…………。」

これには、涼介だけじゃなく、雪まで、言葉をなくしていた。

「ヒカル。今度、他の女の子、紹介してやる。もう天川希美のことは、諦めろよ。」

その涼介の言葉に、雪までもが同意した。

「ヒカル、そうしろ。」

「でも、僕は、天川さんのことが、大好きなんだ。」

僕が、そう言うと、雪と涼介は、もう、それ以上、何も言わなかった。

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