《MUMEI》 扉。ズブズブ、ズブズブと沈んでいく感覚。 水に沈んでいく。 隣には埜嶋さんが同じように沈んでいた。 この感覚に覚えがあった。 僕自身の精神世界へ行った時だ。 確かに僕の時も湖のようなものはあった。 けれどこれは、海のように深い。 深くて、暗くて、冷たい。 背中から沈んでいくところを、姿勢を立て直す。 程なくして、地面と呼べる所に着地した。 埜嶋さんに手を伸ばすと、それを掴み、ふわりと浮かんだスカートの裾を抑えながら着地した。 「ここが……………」 新斗の精神世界。 「こんな真っ暗なとこで見つけろって言うの………?」 埜嶋さんが溢した。 「見つかるよ、きっと」 そう言いながら一歩前を進むと、突然松明が灯った。 松明の灯火は僕を中心に円を画き、それが何段も上へ積み重なっていく。 「え、これって、扉?」 松明に照らされているのは、厚い扉。 形は全て統一されていて、ナンバーもない。 「まるでダンジョンね」 「奥にお宝があるなら、もう少しテンション上がるんだけどね」 まぁ僕の生死が懸かっていると言っても過言ではないけれど。 「とりあえず一つ、開けて、みましょうか」 「う、うん。そうだね」 胸が高鳴る。 ここから何が出てきても対応できるように覚悟をし、深呼吸をした。 そして、ドアノブを掴み、静かに扉を開けた。 前へ |次へ |
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