《MUMEI》

苦笑混じりに
そう言ったら、
蓮華くんは
ふっと笑った。


「愛されて育ったって感じだもんな、お前」



でも、その一言で
私の瞳に闇色が差した。




学園長と出会うまで
愛されたことなんて
一度もない。



実の親にさえも……






「……桜?どうした、ボーッとして」



蓮華くんが怪訝そうに
こちらを見下ろす。
それを見て
ハッとなった。



「……大丈夫!じゃああの店行こっか!」



いけない。
昔と今は違う。
今は学園長が、
お義母さんが
愛してくれてる。


それだけで十分。







「へー、なかなか品揃えいいな」


蓮華くんが高級だと
言っていたお店に
入った私達。


蓮華くんも
初めて入ったらしく
新鮮な反応が
見られた。


確かにこの店、
良いものが沢山揃ってる。



「装飾品ばかりだと思ってたけど、そうでもないみたいだね」



装飾品の類だけだと
思いきや、
雑誌や家電なども
売っているようだ。


でも装飾品が
圧倒的に多いけど。


「あ、これ可愛い」


濃い紫色の少し派手な
花の形をしたヘアピン。


私の髪と同じ色だから
気に入った。
買おうかな、と思って
値札を見てみると
なんと6桁の値段だった。


「うっ……さすがに買えない……」


お小遣いは貰ってない。


全部お義母さんが
出してくれるから
お小遣いがほしいと
ねだったことすらない。


その代わり、
お義母さんの
クレジットカードを
私が持っている。


どんな高い物も
コレひとつで
買えちゃうから
じゃんじゃん使って!
と言われたが、
日頃高い買い物を
しないだけに
この値段のものを
目の前にすると
気が引ける。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫