《MUMEI》

「なあ…寂しかったんだぞ、連絡もつかねーし、メールの返信も全然よこさねーし………もう会えねーんじゃねーかって…、怖かった…」





今日の裕斗の髪は軟らかい…。






でも抱きしめていると彼がいつも使っているブルガリの匂いがするのに、
その匂いで裕斗だってほっとしてたのに…




今日は…無臭だ…。



「今日は…香水つけてねーんだな…」




俺は何気なく言っただけなのに、裕斗の躰が…、僅かに震えた。




そして、腕を突っ張り俺の胸からすっと離れた。





「今日は…、話があって…、来たんだ」




いつもと表情が…違う…。






真剣で…、



何か…






…嫌な予感がする。





俺の中に…緊張が走った。




「何…」






震える声で俺は尋ねる。




――嫌な予感が…する。





裕斗は、俺から目線をそらさず、言った。






「俺…、好きな人が…できたんだ…」











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