《MUMEI》

氷点下並みの空気はそのままに、放課後へと突入した。ほとんどの作業はだいぶ進んでるため、クラス全員居残りしなきゃ当日までに間に合わないとかそんなことにはならないので今日の居残りは私と才原だけ……のはずだった。


「…………なんでお前までいるんだよ」


「…………いちゃ悪いか」


「ふ、二人とも……そんな睨むの止めようよ……」


皆が帰る際に居残りできる人がいるか確かめたところ、私と才原以外は全員塾やら部活やらで居残りできないことが判明していたのだが、何故帰ったと思っていた桐生が今この場で黙々と作業を進めているのだろう。


「邪魔すんなよ」


「してねーだろ!」


あんなことがあったあとに仲良く作業ができるはずもなく、口を開けばこんな有り様だ。塾で居残りできなかった委員長がなにやら頭を抱えていたような気がするが多分原因は今のこの状況だろう。


時間が経って冷静になった今、委員長がかつてのように強行手段を取る前にさっさと仲直りしておきたいのは山々だが、私にもプライドというかなんというか、譲れない何かはあるわけで。


「ふんっ!」


「はんっ!」


互いにそっぽを向いて作業を進める私と桐生。



……最悪のタイミングで気づいたけど、私と桐生ってかなり似てるとこあるよな。



「ふ、二人とも〜……」


頑として仲直りする気配のない私と桐生を見て、ちょっと泣きそうになってる才原。申し訳ないと思う反面、どうやって仲直りしようか……と考える。


「…………」


「…………」



ひたすら、無言。ちらりと桐生を盗み見る。



元はと言えば桐生のせいだ。そりゃ友達いない歴長いけどさ、そんな僕と友達になってくれたのは他でもない桐生だろうが。そんな友達に対してあんな失礼なこと言いやがって……ま、まあ、変な方向に言い返してた私も問題あったけど。


でもやっぱ桐生が悪い。桐生があんなこと言わなければケンカなんてしなかったんだから。

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