《MUMEI》
門の向こうの金髪
 市立夜ヶ岳高校、通称「夜高」。そこには、夜高イチの不良がいると言う……。


「ああ、もうっ。転入初日から遅刻って……あたしのバカっ」

 桜の花びら舞う4月。素晴らしく良い朝である。そんな朝に1人、黒髪を風に靡かせ、住宅街を必死に駆け抜けていく少女が居た。
彼女の名は 黄山 美咲(キヤマ ミサキ) 。市立夜ヶ岳高校の転入生だ。
 父親の仕事の都合で入学予定だった高校を止めて引っ越し、こちらへ転入したのである。

 マンションの前を通り、公園の広場を通り抜ける。公園を抜けた方が近道なのだ。
途中、大きな門のあるいかにもな屋敷に差し掛かる。噂によると、どうもここの人間は極道一家なのだそう。

「ここおっきいよなぁ……どんな人が居るんだろ……」

 学校へ急ぐのも忘れ、足を止める。門には勇ましい龍が彫られており、観る者全てを震わせる様な眼をしていた。

「…………」

 その姿に圧倒され、口を開けて立ち尽くす。すると急に、門の向こう側から大きな声がいくつも聞こえてきた。

「お早うごぜぇやす、若!」
「ああ」
「お気をつけていってらっしゃいやせ!」
「おお」

 最後に聞こえた短い返事と共に門が開く。するとそこには、金髪を左側だけ掻き上げ眼鏡をし、夜ヶ岳高校の制服を着た少年が居た。

 部下らしき人たちに、見送られて。

「……ああ? ……誰だ、お前」

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