《MUMEI》
第1怪: 七不思議
 ―――学校の七不思議。誰もがそんな言葉を聞いたことがあるだろう。
トイレの花子さんに、勝手に音が鳴るピアノ。動く人体模型に、笑う音楽室の肖像画などである。そんなような七不思議が、とある小学校にもあるのだそうだ。

 ―――私立喜咲(きざき)小学校。昼間はごく普通の小学校である。がしかし、夜になり人の気配が無くなると、その姿を変えるのだという……。

 授業も終わり、待ちに待った昼休み。他の児童が校庭へ遊びに行く中で、喜咲小学校5年2組の 鑑鈴太郎(カガミ リンタロウ)は真っ先に、友の席へ飛んで行った。
寝癖と見分けの付かない撥ねた黒髪をなびかせ、その黒い目を大きく開いて。

「なあ、聞いたか!」
「……何を?」

 筑紫静司(ツクシ セイジ)。鈴太郎達と同じ5-2の友である。少し茶色いふわりとした髪で、おとなしい性格の持ち主だ。
読書中、いきなり飛んできた鈴太郎に驚き、こちらも焦げ茶の目を大きく開く。

「喜咲小の七不思議!」
「あーそれ知ってる。確か『鏡の中の男』、『ロッカーから覗く手』、『血の涙を流す石膏像』、『中庭に立つ女』、後は……」

 あと1つを思い出そうとして眉間を押さえていると、後ろから凛とした、透き通った声がした。

「『飛んでくる鉛筆』、『追いかけてくる足音』、『突然起こる笑い声』、だっけ」
「あっそう、それそれ」
「おー、澪! やっぱりお前は知ってたか!」

 鈴谷澪(スズヤ レイ)。こちらも同じ5-2の、鈴太郎の友だ。少し長い黒髪を後ろで束ね、青みがかった黒目をしている。

「もちろん。だって、ここのところこの話題で持ちきりじゃないか」
「下級生はもちろん、6年生の先輩だって興味津々らしいしね」
「そう! だからさ、提案があんだけどよー」

 彼が耳打ちをするため耳を貸せ、と2人をより近くまで呼び寄せる。鈴太郎の目が、より一層輝きを増す。
彼が何か思いついた時の目だ。

 普段はそんなこと笑って流す上級生ですら興味を持った。これは楽しいこと、面白いことが大好きな鈴太郎には、
放っておけないことなのだ。

 この目で見たくて仕方がない。

 この耳で聞きたくて仕方がない。

 この手で解明したくて仕方がない。

 そんな好奇心だけが鈴太郎を動かしていた。そんな冒険心だけが鈴太郎を輝かせていた。

「俺たちだけで、七不思議。解明しようぜ!」

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