《MUMEI》 金色のクラス「赤川凛、かぁ......」 職員室へ向かうため廊下を歩く美咲。途中、何人もの生徒達とすれ違った。ここの制服はブレザーではなく 学ランなので、思わず目を見張ってしまう。そうこうしているうちに、職員室前まで着いた。 「あったあった、ここだ。......よし。失礼します」 「お、待ってたよ。黄山美咲さん......だよね。僕は君のクラス、1年2組担任の 緑根将太(ミドリネ ショウタ) です。よろしく」 「せ、先生! よろしくお願いします!」 緑根将太。背丈は千夏より少し高く、180近い。しかし体は華奢だ。白衣を着ている、ということは 理科教師なのだろうか。焦げ茶色の柔らかそうな髪をしていて、物腰も柔らかそうだ。まあどうだろうと、 彼女の目には “大きな人” としか映っていない様だが。 そんなことにも気付かない緑根は、彼女を1-2の教室へと案内していく。 「ここが1年2組。もうみんな席に着いてるだろうし、早速入っちゃおうか」 「......はい」 「緊張するよねえ、新しい場所で、知らない子ばっかでさあ。僕もここに来たときはそんな感じだったよ」 へにゃ、と笑うと、彼は教室のドアを開けて入っていった。美咲を手招きする。 「はーい、おはよう。今日は待ちに待った転入生ちゃんが来ました。黄山美咲ちゃんです。みんな色々 教えてあげてね」 「は、初めまして! 黄山美咲です。よろしくお願いします!」 美咲が挨拶をすると、自然にその返事が返ってきた。教室の空気はとても良いものらしい。 「じゃあ席は......赤川の隣ね。赤川、色々頼んだよ」 赤川。たった十数分前に聞いたばかりの名が聞こえ、思わず席の方へ目をやる。するとそこには、見覚えのある金髪があった。 が、その顔にはどうも見覚えがない。それに朝あった筈の眼鏡も、棒つきキャンディも、鋭い眼も、一切無い。 それに、聞こえてきた声も、聞き覚えのない、可愛らしいものだった。 「はーい、分かりましたー!」 いぶかしみながらも席につく。席に着くやいなや、早速話しかけられた。 「また会ったね。よろしくね、美咲ちゃん」 「......うん、よろしく......」 朝会った人物とは別人なのだろうか。はたまた同一人物なのだろうか。彼女の頭はそれだけを考えるように なってしまい、授業に集中することが出来なくなってしまった。 前へ |次へ |
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