《MUMEI》
竜の出るお話
エルクは、医者の言葉を脳内で何度も繰り返していた。その言葉はある意味、彼女への死亡宣告であった。

「彼女(せな)を助けるには、竜の髭を手に入れるしかありません。」

この土地から竜が姿を消してから幾年の時がながれたのか?もはや竜の存在は伝説でしか語られる事はない。
その伝説の生き物の髭を手に入れる事など不可能でしかなく、エルクはベットに横たわり眠り続ける愛しい恋人のせなの姿を悲しげにみつめた。

「せな」
痩せ細ったせなの右手を取り、自らの頬へと押し当てた。しかし、せながピクリとも動くことはなくまるで石像の様に硬く体をベットに横たえている。

医者は、そんなエルクに声をかけた。
「貴方は竜の髭を手に入れる事は不可能だと考えていませんか?」

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