《MUMEI》
第2怪:作戦決行!
「解明? ボクらだけで?」

 静司と澪は揃って鈴太郎に聞き返す。それもそうだ、まさか夜の校内へ不法侵入するわけではあるまい。
と、思っていると、案の定鈴太郎は侵入する、と言い出したのだ。

「おう、そうだ! んで夜、校舎内に入るぞ!」
「はあ〜!? 何いっ…… ムグッ!」

 呆れて大声を上げそうになる静司の口を、澪が押さえる。その顔は少し嬉しそうだった。

「騒いじゃダメだよ、静司。僕たちだけの計画にしなきゃ、つまらないでしょ?」
「澪までやる気かよ〜? まじか〜……」
「じゃあ静司だけ逃げる? ふぅん、静司って臆病者だねぇ?」

 嫌そうな静司を巧みに煽る澪。するとそれに見事嵌まった静司は、行くと言ってしまった。

「ぃよしっ! じゃあ今日は金曜日だし、今夜11時50分。校門前に集合な!」

 じゃあなと言い残し、鈴太郎は自分の席につく。もう授業が始まる時間だった。澪と静司も席につき、
その後は普通に授業を受けた。小さな不安と、大きな楽しみを抱えて。




 午後11時50分。校内の灯りはほとんどが消え、灯っているのは日直の先生が持ち歩く懐中電灯の灯りだけである。
そんな校内へ忍び込もうとする三人組がいた。

「……で、どーやって入るんだよ」
「頑張って校門を飛び越える」
「だね。それしかない」
「はあ!? マジで言ってんのか!?」

 大声を出すと見付かってしまうので、小声で叫ぶ。それでもしれっとしている鈴太郎、澪の2人に、静司は
呆れるばかりだった。

「仕方ねーだろ。ホラ、行くぞ」
「行くよー、静司」
「うえぇ……」

 なるべくがしゃがしゃと音を立てないように、校門を乗り越える。全員、運動神経は良い方なので、割と
楽に登り降りが出来た。
 次はどうやって校内へ侵入するかだが、それにはもう鈴太郎が手を打っていた。1階の窓の鍵をあらかじめ
開けておいたらしく、窓はするりと何の障害もなく開いた。窓から鈴太郎、静司、澪の順で廊下へと入る。

「セキュリティがばがばかよ、この学校……」
「むしろ好都合だよ」
「そりゃ、そうだけど……」
「静かにしろよ、お前ら。先生、見回りしてんだからな」

 今は2階を回っているらしく、取り敢えず廊下の先には先生の姿は無い。ひとまず男子トイレに隠れ、
作戦会議を開いた。

「最初は何?」
「手っ取り早いのは『鏡の中の男』だな。東階段の、1階と2階の踊り場にある鏡だから、もう隣の階段だな」
「先生は大抵、西階段から降りてくるし、もう見張ってても問題ないかも」
「12時に出てくるんだっけ? てことは……あと5分くらい?」

 静司は身に付けてきた腕時計を見る。現在時刻は11時55分。現象が起こるまで残り5分だ。

「んじゃ、見張るか!」
「おうっ」

 静かに拳を突き合わせ、行動を開始する。1階で見張ると先生と『男』、どちらにも見付かってしまうので、
2階寄りの階段で時を待つ。3人は、体感したことのない緊張感と高揚感に胸を弾ませながら待った。

「12時……回った……」

 『男』が出てくるという午前12時。先生の足音は、もう1つも聞こえない。全員が鏡へ目を見張った。すると。

「っひ……」
「…………!」
「来たぁ……!!」

 鏡の表面が揺らいだと思うと、その奥から、音が聞こえてきた。コツ、コツ、という硬い音だ。
その音が一番近付いた瞬間、鏡の中から、詰め襟の制服を身に纏い、黒い膝下までのブーツを履き、何やら
見慣れない帽子を被った若い男が出てきた。

 その『男』はそのまま1階へ向かっていく。それをぽかんと見つめたまま放っておく鈴太郎ではない。
行くぞ、と2人に声を掛けると、1階へ向かっていった。

「っちょ、待てよ、鈴太郎!」
「お先にっ」
「澪まで……」

 急いで、しかし足音に気を付けて階段をかけ降りると、鈴太郎が階段の先にあった給湯室の前で、身を
屈め、2人を待っていた。2人を見付けた鈴太郎は、「ここ、ここ」とでも言うように、給湯室の扉を指で差した。
 そして目配せをすると、そろそろと扉を開けた。

 そこに居たのは…………

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