《MUMEI》

せいぜい4桁のものを
買うくらいなのに、
いきなりこんな
高いものは買えない。


というかこのカード
お義母さんのだし。
むやみやたらと
使えないよ。


「何か気に入ったやつでもあったか?」


「えっ!?な、ないよ!」


前を歩く蓮華くんが
話しかけてきて
ビクッとし、
思わず嘘をついてしまった。



でもこれいいなぁ。


ちらちらと視線が
そっちに向いて
しまったからか、
蓮華くんもそちらを
見る。


とたんに顔を
しかめた。



うん、やっぱ高いよね。
諦めよう。



「他も見て回ろうか」


「は?……これ、買わねぇの?」



意外な言葉が
返ってきた。


値段が高いから
顔をしかめてたんじゃ
ないの?



「いや、えっと……」


「それ、欲しいんだろ?」


「………うん」



最終的に私が
頷いた。



でも、本当に高いから
やっぱ別のを見ようかな。
そう思ってぎこちなく
笑顔を形作ると、
何故かムッとした顔の
蓮華くんが。



「それくらいなら出せる。とっとと会計いくぞ」


「え?ちょ、蓮華くん!?」



私の気に入った
ヘアピンを
乱暴に手にとり、
レジへと歩いていって
しまう蓮華くんの
あとを慌てて追う。



「……ったく。欲しいなら欲しいって言えよな……」



蓮華くんの呟きは
少し距離の開いた
私の耳には
入らなかった。

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